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医療システムについて

医療費について

今回は医療費について説明します。

 

窓口で払う医療費の内訳

医療費の項目には、大きく分けて「保険」と「保険外」があります。 

「保険」は医療保険の対象になるもので、2つに分けられます。

1つは入院検査、治療など医療に関するもの(診療報酬)で、「点」で表現されます。 

私の専門科である整形外科で一般的に行われている手術の点数は以下の通りです。

人工骨頭置換術(股)19,500点 

骨折観血的手術   18,810点 

人工股関節置換術  37,690点 

もう1つは食事・生活療養費で「円」で示されている。 

「保険外」は、医療保険が適用されないものです。 

窓口で支払う費用 

医療費の一部負担金食事・生活療養の負担金、そして保険外があればその費用を加えた合計 

窓口で支払う医療費の内訳は 
保険 
医療費の一部負担金 
食事・生活療養負担金 
保険外 
保険外併用療養費など 

医療費の一部負担金 

医療費は、内容と料金が細かく点数化されています。 

→初診料 288点 

 再診料 73点 

 手術 

金額は1点を10円として計算します。 

医療費の一部負担金は、加入している医療保険や年齢によって割合が異なります。 

医療費の一部負担割合 

義務教育就学前(6歳・3月まで) 

→2割負担 

義務教育就学児(6歳・4月~15歳・3月)      →3割負担 

15歳・4月~70歳未満   

→3割負担 

70~74歳        

→2割 
※:一定額以上所得者は3割 
 (注:経過措置あり) 

75歳~            

→1割 
(後期高齢者医療制度)   

※:一定額以上所得者は3割 
   

入院時食事療養費 
入院中の食事にかかる料金です。 

入院時生活療養費 
 療養病床に長期間入院している65歳以上の人は、入院時食事療養費ではなく、入院時生活療養費(食費+居住費)の該当となります。 

※ どちらも、住民税非課税世帯には減額制度があります。利用には、区市町村に申請が必要です。 

保険外併用療養費 

医療保険では、原則として医療保険が適用されない保険外診療があると、医療保険が適用される診療も含めて全額が自己負担となります。 

しかし、次のものについては、医療保険が適用されない部分の費用は自己負担となりますが、医療保険が適用される部分(診察・検査・投薬・入院料など通常の診療と共通する部分)の費用は一般の保険診療と同様に一部負担金を支払うしくみとなっています。 

選定療養 
患者の選択に基づくもので、代表的なものとして「差額ベッド代」があります。 

 ・差額ベッド代(特別の療養環境の提供) 
個室などを患者が希望すると、医療機関が定めた額を負担しなければなりません。 
※「治療上の必要」で差額ベッド代の対象となる病室へ入院した場合など、差額ベッド代を負担しなくてもよい場合があります。 

 ・その他のもの 
制限回数を超える医療行為、予約診療(病院の都合による場合は除く)など 

評価療養 
医療保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供をはかる観点から評価を行うもので、以下のものがあります。 
・ 先進医療、医薬品や医療機器の治験に関わる診療など 

高額な医療費がかかったら 

入院や手術ともなれば、医療費の自己負担額が高額になることもあります。しかし、自己負担額のうち一定額を超えた分は医療保険から支払われます。 

この制度を利用し、ひと月の医療機関等の窓口における支払額を一定額にとどめるには、あらかじめ加入している医療保険の保険者の承認が必要です。 

また、医療保険及び介護保険の自己負担の合計額が著しく高額になる場合に負担を軽減する仕組みもあります。(高額医療・高額介護合算療養費制度) 

詳しくは加入している医療保険の担当窓口におたずねください。 

高額療養費制度 

家計に対する医療費の負担が過重にならないように医療機関の窓口に置いて医療費の自己負担を払ったのち、月ごとの自己負担額が超える部分について事後的に保険者から償還払いされる制度 

入院の場合 

※医療機関での窓口での支払いは自己負担限度額までにとどめる(現物支給化) 

※外来の場合でも同一医療機関で自己負担限度額を超える場合は現物支給化の対象となる。 

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大腿骨近位部骨折(股関節の骨折)

大腿骨近位部骨折:ご家族にやっていただきたいこと

前回記事にて大腿骨近位部骨折について大まかに説明しました。

私がこの記事で一番言いたいことは、

診断、入院治療、退院調整にはご家族の協力が不可欠ということです。

診断

転倒を契機に大腿骨近位部骨折を発生、体動困難となったところをご家族が発見、救急搬送されるパターンが最も多いです。

高齢者が股関節周囲を痛がり動けなかったらすぐに救急車を呼んでください

救急搬送時 

大腿骨近位部骨折は大抵の場合は

そのまま入院となります。

入院時に必要になるものを下記にリストアップしておきますので、持っていって病院に行くと良いでしょう。 

  • 健康保険証(国保、健保、後期高齢者など) 
  • 高齢受給者証(70歳以上75歳未満) 
  • 現在飲んでいるお薬、お薬手帳 
  • 医療受給者証(各種公費負担者証など、該当者) 
  • 限度額適用・標準負担額減額認定証(該当者) 
  • 限度額適用認定証(70歳未満) 
  • その他(現金・入院保証金・緊急連絡先・印鑑等) 

その他、今までかかった病気(既往と言います)、現在治療中の病気(治療をおこなっている病院も)、アレルギー(食事、薬)なども必ず医師から聞かれますので、準備していただけると大変助かります!!

入院、手術後 

入院後の大まかな流れは以下の通りです。 

入院後、大腿骨近位部骨折の手術(①)を行います。

術後1〜2週間入院継続し、全身状態の観察、リハビリを行います。 (②)

この時点で、 

独歩、杖歩行安定して可能であればそのまま自宅退院(③)となる場合もありますが、大抵の場合はこの時点では、自宅退院は厳しくリハビリを重点的に行うための病院(回復期リハビリ病院)に転院しリハビリ継続した後に自宅退院④の流れとなります。 

※元々車椅子や寝たきりであったなどの方は療養と生活機能の回復や維持を担う施設に転院(一般病院、療養型病院、介護老人保険施設)となる(⑤)場合もあります。 

自宅退院に向けて 

●退院後の生活や利用すべきサービスについて相談 

自宅退院後も在宅で介護サービスを受ける必要がある場合があります。 

介護サービスとは、高齢者や障害者など、介護を必要とする人が利用できるサービスのことです。リハビリや福祉用具貸し出し、住宅改修サービスなどもあります。 

主な介護サービスをあげます。 

・家庭で受けられるサービス 
訪問介護(ホームヘルプサービス)/夜間対応型訪問介護(要支援の人は利用できない)/訪問入浴介護/訪問看護/訪問リハビリテーション/居宅療養管理指導など 
 

・福祉用具関係のサービス 
福祉用具の貸与/福祉用具購入費の支給[全額の9割(または8割)が介護保険から支給、支給額には限度額あり] 
 

・住宅改修サービス(つまづいたり、転倒・転落しないように自宅の環境を整える)  

 住宅改修費の支給[全額の9割(または8割)が介護保険から支給、支給額には限度額あり] 

入院時から担当の医師や医療ソーシャルワーカーなどに、退院後の生活や利用すべきサービスについて相談しておきましょう自宅に戻った後も、 安心して療養できるよう介護サービスの相談にのってくれます。 

●介護保険の申請、ケアマネージャーを探す 

介護サービスを利用するためには、あらかじめ区市町村の介護保険窓口で要介護(要支援)認定を申請し、認定を受ける必要があります。その後、ケアマネジャーがつくるケアプランに基づきサービスを利用することになるため、申請と並行してケアマネジャーも探しておくとよいでしょう。 

介護認定の申請から判定までは概ね30日程度かかるので、早めに動きましょう 

→参考:「介護保険、介護サービスについて」 

 ●在宅療養に向けた準備 

ケアマネジャーが決まったら、患者の状況と、家族がどんなことに困っているかを伝え、介護サービス計画(ケアプラン)を作成してもらいます。ケアマネジャーは必要なサービスを受けられるように、サービス事業者へ手配します。 

自宅退院後に、「安全で、生き生きとした家庭生活の継続」のため以下のことを頑張る 

●退院時の移動動作・日常生活の動きを維持できるように、リハビリを継続しましょう。必要に応じてディサービスや訪問リハビリ、通所リハビリ等の介護サービスを継続しましょう。 

●骨折予防のため骨粗鬆症の治療と日常の健康管理のためにかかりつけ医の診察を必ず受けましょう! 

→参照「骨粗鬆症について詳しく」 後ほど公開します。

まとめ

  • 大腿骨近位部骨折の診断、入院治療、退院調整にはご家族の協力が不可欠
  • 高齢者が転倒して股関節周囲を痛がり動けなくなっていたら、救急車を呼びましょう
  • そのまま入院となることが多いので、入院の準備をしてから病院に行きましょう
  • 入院後から退院に向けた準備を進めていきましょう。医療ソーシャルワーカーが相談に乗ってくれます。